メディア/エウリピデス
- 作者: エウリピデス,松平千秋
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/03/01
- メディア: 文庫
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まだ読んだことのない古典の一冊。中野京子『怖い絵3』で、ドラクロワ「怒れるメディア」の章を読んで以来、読みたくなった。ギリシャ神話で、メディアがどういったことをした女性であるかは知っていたが、戯曲で読むのは初めてだ。
当方が読んだのは、ちくま文庫『ギリシア悲劇<3>エウリピデス(上)』に収録されているものだ。
メディアは、黄金の羊毛を求めるイアソンのため、自国を裏切り、弟を殺し、故郷をあとにした。しかし、それだけ尽くし、子まで成したにも関わらず、夫イアソンは当時夫妻が暮らしていた土地の王女と結婚するため、メディアを捨てようとしている。外国人の女、魔法使いの女は忌まわしいとして、王女の父とイアソンは、メディアを国外追放しようとさえした。
メディアは怒った。それは、それは激しく怒った。復讐を誓い、殺意を覚えた。殺意の向かった先は、イアソンではない。イアソンの愛するものたちへだ。
メディアは夫を奪おうとする王と王女を殺した。ここまでならば、肯定はできなくとも、理解はできる。そして、ここからが強烈で、他に類を見ない。メディアは、イアソンがもっとも愛しているだろう、メディア自身が夫との間に成した子を殺した。
ラストには「柔らかい子供の膚を、お願いだ、撫でさせてくれ」と哀願するイアソンを残し、メディアは子の亡骸とともに竜に曳かせた車で立ち去る。
ありとあらゆる創作物の中で、もっとも苛烈な復讐物語の一つだろう。メディアとて我が子を愛していたにも関わらず、夫への怒り(強い愛が裏返ったそれ)が強過ぎたのだ。
この戯曲ではそこまで書かれていないが、Wikipediaで読むとイアソンの末路は悲惨なものである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A4%E3%82%A2
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%B3
- 作者: 中野京子
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2009/05/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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