FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

メディア/エウリピデス

ギリシア悲劇〈3〉エウリピデス〈上〉 (ちくま文庫)

ギリシア悲劇〈3〉エウリピデス〈上〉 (ちくま文庫)

 まだ読んだことのない古典の一冊。中野京子『怖い絵3』で、ドラクロワ「怒れるメディア」の章を読んで以来、読みたくなった。ギリシャ神話で、メディアがどういったことをした女性であるかは知っていたが、戯曲で読むのは初めてだ。
 当方が読んだのは、ちくま文庫ギリシア悲劇<3>エウリピデス(上)』に収録されているものだ。
 メディアは、黄金の羊毛を求めるイアソンのため、自国を裏切り、弟を殺し、故郷をあとにした。しかし、それだけ尽くし、子まで成したにも関わらず、夫イアソンは当時夫妻が暮らしていた土地の王女と結婚するため、メディアを捨てようとしている。外国人の女、魔法使いの女は忌まわしいとして、王女の父とイアソンは、メディアを国外追放しようとさえした。
 メディアは怒った。それは、それは激しく怒った。復讐を誓い、殺意を覚えた。殺意の向かった先は、イアソンではない。イアソンの愛するものたちへだ。
 メディアは夫を奪おうとする王と王女を殺した。ここまでならば、肯定はできなくとも、理解はできる。そして、ここからが強烈で、他に類を見ない。メディアは、イアソンがもっとも愛しているだろう、メディア自身が夫との間に成した子を殺した。
 ラストには「柔らかい子供の膚を、お願いだ、撫でさせてくれ」と哀願するイアソンを残し、メディアは子の亡骸とともに竜に曳かせた車で立ち去る。
 ありとあらゆる創作物の中で、もっとも苛烈な復讐物語の一つだろう。メディアとて我が子を愛していたにも関わらず、夫への怒り(強い愛が裏返ったそれ)が強過ぎたのだ。
 この戯曲ではそこまで書かれていないが、Wikipediaで読むとイアソンの末路は悲惨なものである。

ギリシャ神話のメディアのWikipediaはこちら

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A4%E3%82%A2

ギリシャ神話のイアソンのWikipediaはこちら

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%B3

怖い絵3

怖い絵3