FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

冬の灯台が語るとき/ヨハン・テオリン

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 巻末の訳者あとがきを読むと、本書『冬の灯台が語るとき』は第一作『黄昏に眠る秋』を上回る出来とされ、英国推理作家協会賞、スウェーデン推理作家アカデミー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝いたとある。
 しかし、当方はこの情報には少々首を傾げてしまった。『黄昏に眠る秋』の方が、ミステリとして優れているからだ。
 『黄昏に眠る秋』は一人の悪漢の人生が、『冬の灯台が語るとき』は双子の灯台やその近辺の土地で、それぞれの時代に起こった出来事が、現代に起った事件の描写のあいまいまにエピソードとして挟まれているのだが、第一作のときにはそれらの挿話と現代に起きた事件とがうまく絡まっていたのだが、第二作ではこの繋がりがきれいに機能していない。現代に起きた殺人犯人の正体も、かなり唐突に明かされるものである。
 裏表紙に書かれたあらすじだけを読むと、古典的なゴシックホラーのようだ。実際には本格ミステリだが、ゴシックホラーめいた雰囲気は強く漂っている。エーランド島に移住し、双子の灯台を望む屋敷にすみ始めた工芸教師のヨアキム。しかし、引っ越し間もなくして、家族の一人を不審な形で失う。実はヨアキムが不審な形で失った親しい人間は、一人ではなかった。過去にも一人、肉親が死んでいる。
 一方、この界隈では若者達が強盗グループを結成し、目をつけた家屋敷に忍び込み、金品を強奪することを繰り返した。やがて、ヨアキムの家屋敷にも目をつける。
 期待値が高かっただけに、やや拍子抜けをしてしまった。第三作に期待する。

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)