FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

月さやけき夜に/ポーラ・マーシャル

月さやけき夜に (ハーレクイン・ヒストリカル・ロマンス)

月さやけき夜に (ハーレクイン・ヒストリカル・ロマンス)

 ポーラ・マーシャルは、初めて読む作家。すでに著作が四十冊を越えるベテランの作家とのことだ。
 タイトルはいともロマンティックだが、内容はハーレクインヒストリカルから出版されていることを考えれば、驚くほど正統派のゴシックロマンだ。もっとも「本作は彼女にしてはめずらしい怪奇色漂うお話」とのである。
 ロンドンで暮らす伯爵デヴェニッシュは、領地を任せている親友から奇妙な手紙を受け取った。サリー州にある領地で、男女の謎めいた失踪や死が相次いでいるとのことである。死んだものや消えたものたちの中には、貧しい娘もいれば、紳士階級の男性もいる。
 デヴェニッシュはサリー州に向かい、この一連の不可解な事件の中で最愛の夫(くだんの紳士階級の男性だ)を失った、若く美しい未亡人ドルシラと出会った。デヴェニッシュが領地のあちこちを調べたところ、半ば廃墟となりかけた修道院で、悪魔崇拝の痕跡とおぼしきものが見つかる。この平和で静かな地域に、悪魔崇拝者達が潜んでいるというのか。
 デヴェニッシュとドルシラは協力し犯人達を追うが、彼らにも魔の手が迫る。
 「本作は彼女にしてはめずらしい怪奇色漂うお話」なのが残念な一冊。もっとこういったゴシックロマンを書いていて欲しかった。犯人達との攻防も結構シビアで、読ませるものがある。
 ニコラ・コーニック、アン・ヘリス、そしてポーラ・マーシャルと読んできて思ったのだが、ハーレクインヒストリカルにはロマンスばかりではなく、冒険小説を思わせるものも多い。この『月さやけき夜』でも、敵に囚われ、危機に陥ったヒーローを救出するため、ヒロインが活躍する。