罪深き七つの夜に/エヴァンジェリン・コリンズ
- 作者: エヴァンジェリン・コリンズ,森野そら
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/11/23
- メディア: 文庫
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「不幸な結婚生活を送る男と、薄幸の娼婦の恋愛小説」という設定は、一般文芸や映画の世界ではよく見られるものの、恋愛を主たるテーマとしたロマンス小説ではあまり見かけない。当方が読んだものの中でも、ヒロインが娼婦という設定は、アナ・キャンベル『罪深き愛のゆくえ』ぐらいのもので、彼女とて高級娼婦だったが、物語の冒頭で足を洗ってまっとうな生活を送ろうとしている。おそらく主な読者である普通の女性が感情移入できるヒロインが望ましいため、娼婦というやや特殊な職業の女性が、ロマンス小説の主人公には選ばれにくいのだろう。ちなみに娼館の経営者は、冷血な悪女から、気のいい姉御肌の人間まで、色々なタイプの女性が名脇役として数々のヒストリカルロマンスに登場している。
前置きが長くなったが、『罪深き七つの夜に』は、その珍しい「娼婦がヒロイン」というヒストリカルロマンスである。
十九世紀、英国。ローズは亡父や弟の借金返済のため、月に七日間だけ、高級娼館で働いている。当の弟を初め、そのことは周囲にひた隠しにしていた。
貿易商ジェイムズは、子爵令嬢たる妻アメリアとの不幸な結婚生活に耐えていた。二人の結婚は、裕福な平民と、貧しい貴族との政略結婚だった。アメリアと結婚しておけば、ジェイムズは妹レベッカを貴族の男性と結婚させることができる。だが、その生活は夫にとっても、妻にとっても幸福とは言いかねる代物だった。
ジェイムズはふと足を踏み入れた娼館でローズと出会い、恋に落ちる。二人はあらゆる障害を乗り換え、結ばれようとするのだ。
そこそこ面白いことは面白いが、それこそ一般文芸や映画の世界ではよく見られる「不幸な結婚生活を送る男と、薄幸の娼婦の恋愛小説」以上のものではない。純愛場面と濃厚な官能場面が交互に繰り出されるため、そのどちらも楽しみたい人にはお薦めできる。
- 作者: アナ・キャンベル,森嶋マリ
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2009/10/20
- メディア: 文庫
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