FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

星降る夜に抱かれて/サマンサ・ジェイムズ

星降る夜に抱かれて (ソフトバンク文庫NV)

星降る夜に抱かれて (ソフトバンク文庫NV)

 『ヒースの野に秘めた愛』に続く、「マクブライド・トリロジー」第二作目。今回は『ヒースの野に秘めた愛』のヒロイン、アナベルの次兄、エイダンがヒーローを務める。
 自分の判断ミスで大勢の部下を死なせた悔いを抱き、インドからロンドンへと帰った公爵家次男エイダン。そこで彼は、血と暴力と危険に溢れたゴシック小説家、F・J・スパロウの諸作品が大流行しているのを知る。ただし、作者は決して公にされていない。兄の公爵もこの謎めいた作家の虜だった。
 夜道に散歩に出かけたエイダンは、ちょうどF・J・スパロウの小説にあるような光景……夜道で、お供もつけずにふらふらと散策している若い女性…に出くわす。女性はフィオナと名乗った。小さな書店を経営しており、独立独歩の人生を歩んでいる。
 読者にはそうそうに明かされるが、このフィオナこそがロンドンっ子を騒がせているF・J・スパロウだった。小説が売れるようになって嬉しいが、悩みはつきない。陽気だった父親が亡くなって以来、母ペネロピは正気を失った。現在はしかるべき場所に入院し、できるだけの治療を受けているはずだが、どうしても彼女の状態は良くならない。おまけに、フィオナ自身、自分がなにものかにつけ回され、嗅ぎまわられているという感じが消えないのだ。
 エイダンと幸福な恋に落ちてからも、母の病と、フィオナを追い回す誰かの気配は、彼女を悩ませていた。
 ゴシックサスペンス風のヒストリカルロマンス小説。もっとも、設定のわりにそれほど血生臭いシーンはなく、ラストはほのぼのとしたハッピーエンドで締められる。

ヒースの野に秘めた愛 (ソフトバンク文庫NV)

ヒースの野に秘めた愛 (ソフトバンク文庫NV)