FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

その心に触れたくて/アナ・キャンベル

その心にふれたくて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

その心にふれたくて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 『罪深き愛のゆくえ』では、ヒロインがヒーローに監禁されていた。『囚われの愛ゆえに』では、ヒーローとヒロインが悪漢により監禁されていた。
この『その心に触れたくて』では、ヒーローは職務上の敵に、ヒロインは邪悪な身内によって監禁されている。もっとも物語はヒロインが監禁からどうにか脱出してきたところから始まり、ヒーローは現在自由の身だがトラウマに苛まれている設定だから、彼女の他の作品よりやや明るい。とは言えヒーローが敵から受けた拷問は相当苛烈なものである。
 遺産を狙う義兄により、監禁され、虐待されていた伯爵令嬢カリスは、傷だらけの身になりながらも、どうにか屋敷を脱出した。あと三週間経ち、カリスが誕生日を迎えれば、義兄たちはカリスの資産に手だしはできなくなる。
 ほとんど行き倒れていたところを救ってくれたのは、「国家の英雄」と称えられる、恐ろしいほどハンサムなペンリンの領主ギデオン。強く心優しい彼は、カリスの目には完璧無比な王子のように見えた。だが、カリスは知らなかった。ギデオンが過去に受けた虐待ゆえに、どれほどの絶世の美女でもその身体に触れることができない身だということに。そして拷問ゆえに肉体の一部が変形してしまっていることに。
 二人は行動をともにするうち、互いの心の傷を癒していく。
 アナ・キャンベルの作品はどれもそうだが、この作品もまた水準以上の出来栄えを保っている。健気で強いヒロインと、ハンサムで勇敢だが、決して完璧とは言えないヒーローがお好きな方に。

罪深き愛のゆくえ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

罪深き愛のゆくえ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

囚われの愛ゆえに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

囚われの愛ゆえに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)