FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

怪奇小説傑作集1 英米編/平井呈一訳

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)

 金原瑞人編集、翻訳の『八月の暑さのなかで――ホラー短編集』を読んで、驚いたことがある。以前読んだときには、さして琴線には触れなかったW・F・ハーヴィー「炎天」(これが岩波少年文庫では「八月の暑さのなかで」というタイトルになっている)と、L・P・ハートリイ「ポドロ島」がやたら怖いのだ。
 大人になると、食べ物の嗜好が変わるよう、怪談の嗜好も変わるのかもしれない。
 「炎天」は、この偶然が怖い(これって……偶然だよね?)。さらに語り手が語る最後の三行がまた怖い。そんなことを考えていないで、さっさと逃げようよ。
 あとは王道中の王道、W・W・ジェイコムズ「猿の手」やJ・S・レ・ファニュ「緑茶」が収録されており、個人的な話だが、当方の人生のごく初期に読んだ怪談だから懐かしかった。
 また昆虫嫌い、あるいは昆虫大好きな向きには、E・F・ベンスン、そのままのタイトル「いも虫」が気になってならないはず。
 「炎天」を別格とすれば、当方がもっとも気に入ったのは、ヘンリー・ジェイムズエドマンド・オーム卿」だ。さすが『ねじの回転』を書いた作家で、なにかはっきりとせず、亡霊の被害者となる人の証言もどこか疑わしいのだが、それでいて品があって怖いという作品である。
 語り手の男性がブライトンに赴いたとき、語り手はマーデン夫人とその娘シャーロットという美貌の母娘と知り合った。二人は現代風に言うならば一卵性母娘で、常にべったりしていた。語り手とシャーロットと親しくなったとき、ある亡霊と思しき男が現れる。マーデン夫人が言うには、彼女が若かった頃、彼女が別の男と結婚したばかりに死んだ男で、しばしば現れるのだという。彼女が言うには、男の亡霊はシャーロットに意地悪をしているのだという。亡霊に関する彼女の考えは当たっているのか。
 順にシリーズを追って読んでいくつもり。

八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)

八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)