FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ダーク・チャイルド 血塗られた系譜/パコ・プラサ監督

 こういうホラー映画を待っていた!
 出生の謎、家系に隠された秘密、現在にまで影を及ぼす過去の惨劇と、実に当方好みのゴシックホラー映画である。原作は『母親を喰った人形』などの邦訳があるラムジー・キャンベル。
 若き令嬢ダニエラは愕然とした。精神を病んだ母の代わりに、強い愛情をひたすらに注いでくれた父が彼の誕生日に自殺したというのだ。理由はさっぱり分からない。しかも異常な事態はそれだけでは済まなかった。父の墓が荒らされ、遺体が盗まれたのだ。どうやら異様な宗教観を抱くものたちの犯行のようだ。
 父の周辺を探るダニエラは、かつて妻を殺し、我が家を焼いた殺人者の存在に辿り着く。どうやらその殺人者もまた、ダニエラのことを探っているようだ。
 黒幕達の持つ信仰の忌まわしさもさることながら、父親をひたすら愛し、父親に贈られた昆虫(!)を大事に大事に育て、父親にまつわる謎を追うためならば不法侵入など朝飯前の高慢なヒロイン、ダニエラのエキセントリックさと、彼女が辿り着いた末路とが印象に残る。
 救いというものがない、真紅の鮮血と、闇の漆黒で塗りつぶされたようなホラー映画で、実に良かった。スペインにはホラー映画の秀作が多いと唸らされた。
 ゴシック。ゴシック。