FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

黄昏に眠る秋/ヨハン・テオリン

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 凄く面白かった。イェルロフ爺ちゃん、かっこいい。ユリアも健気だ。ラスト近くで待ち構えている一撃にも参った。
 魅力的な登場人物、美しい風景描写、骨太のストーリー展開、きっちりとした謎解きと……そしてラストの一撃、すべてが揃った傑作。
 北欧から良き風が来ている。
ここ最近読んだ北欧産のミステリ、同じくスウェーデンのカミラ・レックバリ『悪童』も、アイスランドのイルサ・シグルザルドッテイル『魔女遊戯』も、良かったが、このヨハン・テオリン『黄昏に眠る秋』も負けていない。
 看護師ユリアは、故郷、霧深いエーランド島で、幼い息子を失っていた。死体が見つかったわけではない。しかし、イェンスの姿はどこにも見当たらなかった。だが二十数年後の今になって、イェルロフのもとに、イェンスの靴が郵送されてきたのだ。
 疎遠にしていた父、背を向けてきた故郷に、足を踏み入れるユリア。現地の警察官レナルトと協力しながら、ユリアは、そしてイェルロフは独自の調査を始める。
 この一九七二年に起きたイェンス失踪事件に、一九三六年に十歳だったニルス・カントという一人の悪漢の人生が絡む。同じくエーランド島の出身で、幼い頃から尊大で利己的で強欲、殺人を含めた罪を重ねてきたこの男の人生と、イェンス失踪の、意外な関わりがあった。
 現代に起きた子供の死、もしくは失踪(『黄昏に眠る秋』では、物語が始まる二十数年前の出来事だが)に、一人の悪人の人生が絡むという構成は、『悪童』と似ている。だがドメスティックな印象が強かったあのミステリに比べ、ハードボイルド風の、乾いた力強さに満ちている。
 北欧からの良き風、もっと来い。
 訳者のあとがきによると、エーランド島シリーズは、ゆるやかなつながりを持つ秋冬春夏の四部作となる予定のこと(アン・クリーヴス<シェトランド四重奏>のようだ)。第二作はゴシック要素がパワーアップしているとのことだ。
 読みたい!読みたい!読みたい

悪童―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

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魔女遊戯 (集英社文庫)

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