REC/レック /ジャウマ・バラゲロ監督
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2008/11/28
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これはなんの予備知識もなく見たかった。ある程度、どんな映画が知っていてさえ、十分堪能できたのだから、なにも知らずに見ていたらもっと驚き、怖がり、そして楽しめたはず。
一台のカメラが、ずっと事件の推移を映し出しているという、ドキュメンタリータッチのホラー映画である。
ローカルテレビ局のレポーター、アンヘラはカメラマンのパブロとともに消防士の取材を行っていた。あるアパートメントで老女が叫びながら暴れているという通報を受けた消防士達は出勤し、彼らもそれに同行した。
消防士達の活躍を記録した、平凡なドキュメンタリーができるはずだった。だが実際にはアンヘラを含めアパートに向かったものと住んでいたものは、地獄を見ることとなり、パブロのカメラはその地獄を撮影することとなった。
通報される原因となった老女が、助けに来た男に噛みつき、出血多量で生命が危ぶまれるほどの大怪我を負わせたのだ。慌てて外部に運び出そうとする人々。だが、建物は警察によって外側から封鎖されていた。決して出るな。出ようとすれば、生命に関わるとのおそろしいほどの威嚇をされる。
だが、真の恐怖はそこからだった。ひとたび噛まれたものは、変わる。ひどく凶暴になり、それまでの人間性を一切失う。
先に建物の内部に到着していた警察官、消防士たち、アパートの住人たちは、なんとか混乱を抑え、感染を防ぎ、アパートを脱出しようと試みる。だが、彼らは一人、また一人と怪物へと変わっていく。その寸前まで、生き延びてともに建物を出ようと戦った仲間ですら。
目新しい要素はさしてない……ドキュメンタリータッチのホラー映画はいまや珍しくもないし、ゾンビ映画のお約束も優等生的なほど守っている。だがその上でそれらの美点を融合させ、最大限に引き伸ばした実に良き作品である。77分というその短さも、映画全体のシャープさを引き立てている。
余談ながら、序盤ではあれほど快活で、取材への意欲に満ちていたヒロインが、数少ない生き残りとなってしまった終盤において、半ば狂ってしまったかのようにヒステリックになっている様子が変にリアルだった。
あのラストシーンにもぞっとする。続編を見るのが楽しみだ。
傑作。