深く、暗く、冷たい場所/メアリー・D・ハーン
- 作者: メアリー・D.ハーン,Mary Downing Hahn,せなあいこ
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 2011/01
- メディア: ハードカバー
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二〇〇八年エドガー・アラン・ポー賞のジュニア部門にノミネートされた作品。
子供が読めばトラウマもの、大人が読んでもなかなか面白い、ゴーストストーリーである。破れた写真や、ゲーム盤などの小道具の使い方もいい。
幼い母と、幼い伯母、そして、やはり幼いであろうもう一人の誰か。写真には、三人の少女が撮影されているはずだった。だが、最後の人間が誰であるか、十三歳のアリには分からなかった。身体の一部を残して無残にも敗れ取られていたから。母クレアも、伯母ダルシーもなにも知らないと言った。しかし日頃から神経質な母親は、このときさらに動揺していた。
夏休み、アリは画家である伯母ダルシー、ダルシーの娘である四歳のエマとともに、メイン州の湖畔の別荘でひとときを過ごすこととなった。母と伯母はまだ少女だった頃、よくこの別荘に来ていたというのに、なぜか母はひどくこの家と、この土地を嫌っていた。そして伯母は、自分の別荘で過ごした時代の記憶をほとんど失っていた。かつての友人に会っても、なにも浮かんでこず、顔がまったく分からないのだ。
やがてシシィと名乗る幼い少女と湖で出会ってから、なにかが少しずつ変わり始めた。シシィは明らかに悪意もつ、不気味な少女だった。だがエマはしきりに懐き、実母ダルシーや、姉も同然だったアリにも、激しく反発するようになる。そして陽気だった伯母は、精神的に追い込まれ、常に神経衰弱気味の母クレアに似てくるのだ。
ラストは完璧なハッピーエンドとは言えないけれど、救いはある。
愛らしいティーンエイジャーの女優をヒロインに据え、映像化したならば、カップル向け、家族向け、ホラー初心者向けの、良質のホラー映画が出来上がるのではないだろうか。
ネタバレになるから詳しく書けないが、過去に起きたある惨劇の影響が、姉妹の上に、まったく違う形で表れているという点が興味深く、また恐ろしい。
訳者によるあとがきによると、作者はたくさんのゴーストストーリーを書いているとのこと。もっと翻訳されてくれ。