FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵/歌野晶午

舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵 (カッパ・ノベルス)

舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵 (カッパ・ノベルス)

 舞田ひとみシリーズ、第二作。前作『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』から三年間の月日が流れている。
 タイトルから察すれば、「ローティーンの少女が巻き込まれた、日常のささやかな謎をとく甘酸っぱいミステリ短編集」のように感じられるが、そんなことはまったくない。
 『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』のときと同様、著者のことばには「基本はゆるミス」とあるが、「ゆる」くなどはまったくなく、いかにも本格ミステリらしい本格ミステリが詰まっており、ひとみとその友人三人は「現実社会の厳しさ」だとか、「陰惨な犯罪」だとかにぶつかることとなる。
 「白+赤=ピンク」、「警備員は見た!」、「幽霊は先生」、「電卓男」、「誘拐ポリリズム」、「母」の六編が収録されているが、「誘拐ポリリズム」と「母」が良かった。
 「誘拐ポリリズム」では、ひとみの友人の一人の弟が誘拐される。この誘拐事件における中盤でのおかしな成り行き、そしてその真相には膝を打った。しかしこの弟は、小学せいでこんなプレイボーイでは未来が怖い。
 また「母」ではある患者の失踪事件とその解決の出来栄え以外にも、事件に関わったものたちのそれ、ひとみの友人のそれ、そしてひとみ自身のそれと、三つの母娘関係が直接間接的に絡んでいるのがいい。
 どうでもいいが、彼女を次々と作る小学生男児や、ひとみが他人の前では、父親を「あれ」呼ばわりしているところに、変なリアリティを感じさせる。
 質の高い本格ミステリ連作短編集。
 次に登場するとき、ひとみは十七歳とのこと。あの人とは、正面きって顔を合わせるのだろうか。