FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

死霊の棲む家/マイケル・R・モリス監督

死霊の棲む家 [DVD]

死霊の棲む家 [DVD]

 同じようなタイトル、同じようなテーマ(幽霊屋敷もの)が山ほどあるであろう作品。しかし、それらの中でもこの『死霊の棲む家』はなかなかの佳作。こういったものにたまにぶつかるから、知らない監督のホラー映画を漁るのはやめられない。これを見る寸前に見た、よく似たテーマのメアリー・ランバート監督『アティック』が今一つだっただけに、さらに面白く感じられた。
 女性ホラー小説家が、作品の執筆のため、廃墟風のある美しい館に移り住んだ。だがしばらくときが経つと、彼女はそれまでの人間関係の一切を断ち切り、屋敷にこもるようになった。この館を仲介した不動産屋の男性も姿を消している。
 小説家の兄、編集者、その部下、不動産屋の娘、それに小説家の元夫とその恋人が館を訪れる。小説家はいた。だがひどく放心しており、正気を失っている様子だった。小説家は言う。一度足を踏み入れたが最後、この家からは決して逃げることができない。あの子が許さないから、と。
 百年ほど前、この家にはある牧師が暮らしていた。死んだ妻の不貞を疑った彼は、幼い娘を地下室に監禁し、世間とは一切関わりを持たせないように育てた。そして娘を憐れみ、逃がそうとした使用人を、娘の眼前で焼殺した。牧師の、娘の、そして殺された使用人の怨念がいまだこの家に残っているのだと。
 小説家の戯言と皆は信じないものの、実際に屋敷から出ることができず(出ようとすれば、なにものかの力によって惨殺される)、一人、また一人と殺されていく。しかもその人間がもっとも恐れるもの、例えば火や水や流血などを用いられ、精神的にいたぶられながら。
 あまり派手なところはないものの、正当派ゴシックホラーの小品として好感が持てる。結末も良かった。
 館を舞台としたホラー映画が好きな方には勧められる作品。