FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

美しく燃える情熱を/コニー・ブロックウェイ

美しく燃える情熱を (ライムブックス)

美しく燃える情熱を (ライムブックス)

 『純白の似合う季節に』、『ふりむけば恋が』といった著者のコメディタッチのロマンス小説しか読んだことのなかった当方としては、この『美しく燃える情熱を』のダークな雰囲気にはびっくりさせられた。ロマンス小説として出版されているにも関わらず、甘さはずいぶんと控えめ、むしろ苦い。
 ロマンス小説というより、ロマンスに比重が置かれた歴史小説という印象が強く、さらにそこに付け加えるならば、ゴシック小説の印象も強い。
 なにせ悪漢の貴族、彼が支配するスコットランドの城ワントンズ・ブラッシュとそこで繰り広げられる陰謀、近親間の激しい憎悪、清純な乙女と翳りのある男(悪党の実の息子で、実父を激しく憎んでいるが、理由があり父に従っている)の恋と、美味しい道具立てが揃っている。こういうものにたまにぶつかるから、ロマンス小説漁りはやめられない。
 十八世紀、スコットランドイングランド人、カー伯爵子息メリックは、北スコットランドのマクレアン一族の乙女の夫となり、策を弄して妻の一族すべてを滅ぼすと、城と財産を手に入れた。マクレアン一族の乙女を始め、彼の妻となる女性は次々と生命を失っていく。彼によって滅ぼされたマクレアン一族は、今は爵位を継ぎ、カー伯爵となったメリックを執拗に狙っていた。カー伯爵の冷酷さは、実の息子にも向けられていた。伯爵の次男レインは無実の罪で牢獄に幽閉されているのに関わらず、伯爵は保釈金を払ってレインを助け出そうとしない。代わりに長男アッシュは弟を救うため、父親への呪詛を押し殺しながら、彼に従っていた。
 父親の命令は、伯爵が後見人をつとめるリアノン・ラッセルという乙女を城ワントンズ・ラッシュに連れ戻すこと。リアノンは内戦(この内戦を利用し、カー伯爵は敵を葬っている)で肉親すべてを失った孤児だ。アッシュは婚約者あるリアノンを誘惑し、スコットランドへと連れ去る。父親の命令もあったがアッシュはリアノンを本気で愛し始めていた。
 久しぶりに読んだ、ゴシック小説らしいゴシック小説。マクレアン三部作の第一作にして、ロマンス小説愛読者の中でも人を選ぶであろう暗く重い傑作。

純白の似合う季節に (ライムブックス)

純白の似合う季節に (ライムブックス)

ふりむけば恋が (ライムブックス ブ1-6)

ふりむけば恋が (ライムブックス ブ1-6)

↑コニー・ブロックウェイはラブコメもうまい