FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ブラスでトラブル/アリサ・クレイグ

ブラスでトラブル (創元推理文庫)

ブラスでトラブル (創元推理文庫)

 とても正直に言えば、「アリサ・クレイグ/シャーロット・マクラウド」の作品には、さほど緻密な謎解きを求めていない。登場人物の造形の楽しさ、彼らの会話の軽妙さが、彼女の作風の魅力の大半を占めているからだ。
 しかし、ものにはほどというものがある。これまでに読んだ彼女のミステリの、ほとんど多くには犯人を確定するにいたる推理のための伏線は今一つ感じられなかったが、動機についてはそれまでに語られたことで納得するものが多かった。だがこの『ブラスでトラブル』は別だ。マドック・リース警部が犯人を当てる際、動機も語られるのだが、「そんな事実あったの?」と思わず驚くぐらい唐突な代物だ。いくらコージーミステリとは言え、アリサ・クレイグとは言え、やり過ぎである。
 カナダの騎馬警官隊の名警部、マドック・リース。ひどい音痴である彼は、著名な指揮者である父を筆頭に名だたる音楽家達を輩出してきた一族の鬼子だった。やがて父サー・エムリンの指揮する演奏会でホルン奏者が奇妙な死を遂げる。次の公演地に向かう際、彼ら一行を乗せた飛行機はゴーストタウン(元鉱山、現在は観光地、だけど今は営業していない季節)に不時着、マドック・リースとサー・エムリンの楽団は、連続殺人事件に巻き込まれるのだ。
 出来はいま一つならず、いま二つといったところ。