FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

子爵が結婚する条件/キャロライン・リンデン

子爵が結婚する条件 (ライムブックス)

子爵が結婚する条件 (ライムブックス)

 訳者によるあとがきから、「ひょっとして美術ミステリの要素がある?」と考えたが、実際に読んでみると、その要素はごくごくわずかだった。
 十九世紀、英国。スチュアート・ドレイクはベルメイン子爵の孫ではあったが、父親に勘当され貧窮のうちにあった。やばい。このままでは、購入した土地、オークウッド・パークを手離せばならなくなる。この土地を守る済む方法はただ一つ、ハンサムな容姿を活かして金持ち女性と結婚することだ。やがて彼の伊達男ぶりに引っ掛かった年端の行かない令嬢が一人。大喜びのスチュアートだったが、思わぬ邪魔者が現れた。令嬢スーザンの叔母、未亡人でもあるグリフォリーノ伯爵夫人シャーロット。どうやらこの伯爵夫人、スチュアートが金目当てであることをばっちり見抜き、スーザンにしきりに交際をやめように言っているらしい。スチュアートはスーザンの話から、いかめしい老婦人を想像していたが、実際に会ったシャーロットは、彼より二歳年下の美しい女性だった。スチュアートはシャーロットに惹かれる。
 二人の恋の駆け引きに加え、スチュアートの出生の秘密、スーザンの恋の行方、そしてシャーロットの家に幾度となく忍び込む泥棒の謎が加えられ、なかなか愉快なヒストリカルロマンスになっている。
 恋愛あり、冒険あり、ちょっとした謎解きもあり、とこのジャンルの作品として水準以上の出来栄え。ヒーローとの出会いによって、ヒロインが心の傷を回復していく様子に読み応えあり。