FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

サマーウォーズ/細田守監督

 久しぶりに映画を見に行ったので、その感想。
 
 
 
 「あの女傑だったら、十分家業を復興させられただろうに、なぜそうしなかったんだ。しないと決めていたのか?」だとか、「あの警察官の青年だけ、登場人物の中でひたすら道化役、足を引っ張る役を強いられている。気の毒に」だとか、いろいろと突っ込みは浮かんでくるが、これは素直に面白い作品だった。家族で見てもいいし、友人同士で見てもいいし、カップルで見てもいい。
 仮想都市OZが、人々の生活に深く浸透している近未来。
 平凡な(平凡かな?)は高校生、健二は落ち込んでいた。数学オリンピックの代表選考に一度は名を連ねたにも関わらず、結局落選したから。だが彼の落胆は喜びへと変わる。憧れの先輩、夏希に声をかけられ、ともに彼女の田舎、長野県の上田市に向かうこととなる。
 足を踏み入れた陣内家は赫々たる名声を誇る家柄、夏希の曾祖母、栄の九十歳の誕生日を祝うために集まった親族一同は、数多かった。フィアンセのふりをしてくれと夏希に頼まれ、仰天する健二。栄や陣内家の面々は温かく迎えてくれた。
 だが侘助という謎めいた男が陣内家を訪れ、そして健二のもとにやはり謎めいたメールが届いた(数式であり、健二は思わずそれを解いてしまう)ときから、事態はOZそして、現実世界の滅亡にも関わる大惨事へと展開していくのだ。
 某登場人物については「実は女の子ではないか」などと陳腐きわまりない疑いを抱いたが、それはなかった。愚かな己を慰めるため、同じ疑いを抱いたものは多かったのではないかと密に考えている。
そして話の本筋にはまるで絡んでこないものの……おそらく帰宅してから、色々なことを知り、心底仰天するであろう……陣内家の一人で、登場人物達が見るテレビの中でひたすら野球をやっている甲子園球児の少年のエピソードも楽しい。
SFで、ラブコメで、ホームドラマで、成長物語で、シリアスでもあれば、コメディの要素もある。この『サマーウォーズ』、娯楽映画の一つのお手本である。映画マニアも、そうでないものも、幅広い人間が楽しめる一作。

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