FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

メイド 冥土/ケルヴィン・トン監督

メイド 冥土 スペシャル・エディション [DVD]

メイド 冥土 スペシャル・エディション [DVD]

 自分で解説するのもださいが、タイトルは女中さんのメイドと、死後の世界である冥土をかけたものである。シンガポールで作られ、シンガポールで大ヒットしたホラー映画。
大邸宅に入り込んだ若い娘が、その館で散々怖い目に遭うという典型的なゴシック映画である。アジア(シンガポール)でゴシックロマンをやるとこんな感じになるんだな、とちょっと新鮮な感じを受けた。
 十八歳のローサは、フィリピンの貧しい村の出身。孤児で、年齢の離れた幼い弟と二人、叔父の家で世話になっていたが、シンガポールの富豪のメイドという職を得て、一人故郷を離れることとなった。
 勤め先は中国人のテオ夫妻の邸宅。彼らには身体は大人の男性だが、知能の発達が遅れて心は幼児のままのアスーンという息子がいた。アスーンもテオ夫妻も優しく、ローサはひとまず安心した。が、カトリックでフィリピン人のローサには戸惑う風習も多かった。
 ときはちょうど太陰暦の七月。この月は道教を尊ぶテオ夫妻(及びその地域の住民)にとっては、死者が地上をさ迷う、特別恐ろしい期間だった。テオ夫妻はいくつかの小さな禁忌をローサに課し、ローサはそれにうなづいた。ローサは大都会が初めてでわくわくしたし、メイドの職も失いたくなかった。テオ夫妻は七月をひどく恐れており、ローサはやがて屋敷で、そして町で様々な怪異と出会うこととなる。
 欧米のエンターテイメントのスピード感に慣れた身として、前半のまったりとしたテンポに苛々とさせられる。特別な時期のせいで現れた亡霊らしきものにローサが苦しめられるのだが、その表現はいつも同じで「ちょっと退屈かも」と思ったのだ。
 が我慢してみる甲斐あったのか、ラストにはそこそこ意外性がある(と書くと、皆さん分かってしまうだろうか)。
 最後まで見た感想は「悪くない」。というかホラー映画のファンにはお薦めしたい。自分が東洋人のくせにこんなことを書くのはおかしいが、「特別な祭り」と「幽霊屋敷」というホラー映画の定番の素材に、東洋のスパイスが効いてちょっと風変わりな料理に仕上がっている。
 ハリウッドで作られたならばもっと出張るであろう、他のメイドの女の子や、郵便配達の青年を下手にヒロインに絡めないのも、お国柄なのだろうか。