FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ひらいたトランプ/アガサ・クリスティー

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 アガサ・クリスティーが毛色を変わったものを書こうと目指した、しかし結局のところいつも通りの彼女のミステリ(それも面白い)作品になったという印象がある一冊。
 不気味な男シャイタナ氏が不気味なパーティーを開いた。一見したところ、ただ老若男女が集まってブリッジをするだけの会合、だがシャイタナ氏は言う。集められた四人の男女、医師、探検家、若い娘、老婦人のすべては、殺人犯でありながら法の手をまんまと逃れた人間達なのだと。やがてシャイタナ氏は殺される。
 「ブリッジの点数表を通して真犯人を追いつめる」とのあらすじから、「ひょっとしてブリッジの説明ばかりされるのか」、「点数表ばっかりが出てくる小説なのかも」などと心配していたら、前記通り、いつもの彼女のミステリだった。メインであるはずの「ブリッジの点数表を通して真犯人を追いつめる」部分の扱いが小さく、その内容も強引に過ぎる(「こんなゲーム展開してるから、こいつが犯人だ!」)ような気がするものの、相変わらず容疑者達に対する人間観察の筆の冴は抜群、ラストの意外な展開も効いていて総じてなかなか面白かった。
 ブリッジの詳細な説明は巻末にあり。