フリッツと満月の夜/松尾由美
フリッツと満月の夜 (TEENS’ ENTERTAINMENT)
- 作者: 松尾由美
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2008/04
- メディア: 単行本
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王道と陳腐とは紙一重。「よくある設定」はそれを使うとお話が面白くなるがゆえによく使われ、手垢にまみれきった代物になるのである。それが王道と呼ばれるか、陳腐と呼ばれるかは、作者の腕次第だ。
都会から田舎にやってきた少年の、奇妙な友情と冒険とを描いた一夏の物語。なんてありふれているんだ。しかし、やっぱり面白いのだ、これが。
カズヤは、小学五年生の少年。デザイナーの母親を都会に残したまま、小説家の父親とともに港町へと向かうこととなった。その町では幾つかの不思議な出来事が起こっていた。一つは町を方向音痴の泥棒がかき回していること、もう一つは資産家の老婦人が亡くなり、その遺産がとこかに消えたこと。彼は洋食屋「メルシー軒」の少年ミノルとともにこれらの不思議な謎に挑むことになる。やがて彼は、意外ななにかと出会うことになる。
一部超常現象が見られるが、それ以外は本格ミステリとして楽しめる。児童向けに出版されたのだが、無国籍風で洗練された松尾由美特有の雰囲気が満ちており、十分に大人のミステリ好きにも楽しめる。
表紙に書かれている動物が好きならば、もっと楽しめるかも。