FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

凶宅/三津田信三

凶宅 (光文社文庫)

凶宅 (光文社文庫)

 『禍家』に続き、新居に家族とともにやってきた少年が、散々怖い目に遭うという幽霊屋敷小説(ただしミステリの要素有)である。地味でありながら、相変わらず良い質を保っている。
 日々乃翔太は小学校四年生。家族の仲は良かったものの、彼は密かに両親や姉の桜子には疎外感を抱き、幼い妹、李実にのみ親近感を覚えていた。だが奈良の新居、山の麓にぽつんと建った家に越して以来、その李実におかしなことを口に出すようになった。山に棲むなにものかが李実を訪ねてくるというのだ。翔太は怖くてならなかった。元より彼も、この家からなんとも言えぬほど忌わしい印象を受けていたから。
 やがて彼は、以前にこの家で暮らしていた少女の日記を手にすることとなる。
 みずみずしい感性を持つ少年が、住んでいる家での超常現象を通して家族愛や友情を深めていくという展開も『禍家』に続いてあり、例によって例のごとくのオチもあり。小学生だというのに、少年がやけにマニアックな映画に詳しいというのもご愛嬌だろう。
 誰もが楽しめる秀作。

禍家 (光文社文庫)

禍家 (光文社文庫)