FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

イット・フォローズ/デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督

 すごく怖い、そして面白い!ここ数年見た中で一番いいホラー映画だった。
 派手な展開があるわけでもないのに、独特の迫力と魅力がある。そしてひたすらゆっくりとこちらへと近づいてくる「それ」はただただおっかない。隙のある箇所から建物内に侵入する、人の目を欺いて標的の親しい相手に化ける、しかし人間の武器による攻撃はある程度効くらしいといった脈絡のない特徴を持ち、まるで正体が掴めない様子が、さらに恐怖をかきたてる。
 ジェイはボーイフレンドのヒューとのデートとセックスののち、不意に彼から暴力を受け、失神する。目が覚めると、ジェイは夜の人気のない公園の中、下着姿で椅子に縛り付けられていた。
 ヒューは説明する。自分は あたかもある種の病のように性行為で伝染する超常現象にかかっており、それを今ジェイにうつしたのだと。そしてジェイには、どう考えても異様な、裸の女がゆっくりとこちらに向かってやってくるのが分かった。
 これからはヒューの代わりに、ジェイが「それ」に追われ続けることとなるのだ。
 ジェイは友人たちとともに、この超常現象に対処しようとする。
 この映画、ジェイが「じゃあ私もさっさと誰かにうつせばいいや」など言い出さず、仲間たちとまっすぐに「それ」に立ち向かっていく様子が良かった。また音響、間の取り方がうまい作品で、「それ」が出て来る場面も怖いが、「それ」が現れるか現れないか分からないときの不穏な雰囲気も巧みに醸造している。
紛れもない恐怖映画の傑作であり、青春映画の匂いもする作品。