FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

魔邸/三津田信三

魔邸

 

 『禍家』、『凶宅』に続く<家三部作>の掉尾。幼い少年が新たな環境、新たな家に足を踏み入れ、怪異と遭遇する(ミステリ要素もあり)という基本的な骨格は同じながら、先二作はやや毛色の違う印象を受け、「真に恐ろしいのは・・・・・・」と言いたくなるところがある。
 十一歳の優真は、母の再婚相手である義父の仕事の都合で、一時期大好きな叔父の別荘で暮らすこととなった。別荘は森に囲まれていた。優真同様の幼い少年が神隠しに遭った森だ。そして優真が家の中で、住人以外のなにかの気配を感じるのである。
 秀作。ラスト一行でぞっとさせられるし、ミステリ的趣向もよく効いている。

 

禍家 (角川ホラー文庫)

凶宅 (角川ホラー文庫)

偽りのレベッカ/アンナ・スヌクストラ

偽りのレベッカ (講談社文庫)

 

 いつも体調の悪い二月だが、ドット・ハチソン『蝶のいた庭』、そしてアンナ・スヌクストラ『偽りのレベッカ』、立て続けに傑作ミステリを読むことが出来て嬉しい。味わいはずいぶんと違う。

 去年読んだジェイン・ハーパー『渇きと偽り』も秀逸なオーストラリア産ミステリだったが、このアンナ・スヌクストラ『偽りのレベッカ』も優れたオーストラリア産のミステリである。それも、全身の産毛が逆立つような、某所で思わず「ぎゃああ」と叫びたくなるような、怖いサイコサスペンス。

 突如消えた十六歳の少女レベッカ。十一年後、万引きで捕まった家出娘のヒロインは自分のことをレベッカ当人だと言い張った。自分は誘拐され、記憶を失ったレベッカだと。事実は違っており、彼女はレベッカではなく、なぜ本物のレベッカが失踪したのか知らなかった。レベッカの家族、父母と双子の弟たちはレベッカを名乗る、レベッカに似た嘘つきヒロインを優しく受け入れた。まったく疑う様子はなく、本当に本物のレベッカなのかと問いただす様子もなく。

 この偽物女にとって都合にいい肉親の態度は、読む者に強烈な違和感を与える。強烈な違和感と、そして恐怖を。やがて偽物女のヒロインもレベッカ失踪の真実を知ることがなる。

  替え玉物・・・・・・という言葉を今でっちあげた・・・・・・にして、自分が偽物だと分かっている偽物の視点から描いた希有のサスペンス。

 とにかく怖い。そして面白い。傑作。

 

蝶のいた庭 (創元推理文庫)

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ)

雪と毒杯/エリス・ピーターズ

雪と毒杯 (創元推理文庫)

 

 「修道士カドフェル」シリーズの作者による本格ミステリ修道士カドフェル」シリーズは物語としては面白いけれど、ミステリ部分が弱いのが不満だった。しかしノンシリーズであるこの作品は謎解きの醍醐味を読者に与えてくれる。

 オペラ界の伝説的な歌姫が死に、歌姫の関係者ばかりが乗ったチャーター機が山の中に不時着することになる。小さなホテルという宿に宿泊することができた。そこで亡き歌姫の遺書が公開され、限られた登場人物の中で殺人事件が発生する。
 一九六〇年に発表された作品だけ古風な印象はあるが、(繰り返すことになるが)謎解きが楽しめ、恋のさや当てが楽しめ、ユーモアが楽しめる。
 とても楽しむことが出来たミステリ小説の秀作だった。

創元推理倶楽部例会

雪と毒杯 (創元推理文庫)

 

 本日は名古屋創元推理倶楽部の例会です。幹事は私。課題本はエリス・ピーターズ『雪と毒杯』。先ほど読了したのですが、我ながら良いミステリを選びました(自画自賛)。